東京都市怪談ラプソディ No.32 『午前4時の花嫁 - Wands King Bride』
WANDS KING BRIDE
この物語は実在する人物の氏名および実在する店舗・企業とは関係のない、再解釈された都市怪談です。登場人物の名前はすべてイニシャルで表記します。
ある雨の明け方
東京の、とあるマンション。
時刻は午前4時ごろだった。
アイドルか映画俳優のようにきちんと着飾った男が、遅い帰宅を終えて自宅へ戻ってきた。
彼の名はS。
ゆっくりジャケットを脱いでソファへ放り、身体を預けようとした瞬間、携帯電話が鳴った。
Sは画面に表示された名前を見るなり顔をしかめた。
「A?」
そして苛立った様子で電話に出た。
「あ、誰だよ。こんな時間に……ん? A?」
舌打ちした。
「なんだよ、お前。こんな時間に電話するなって言っただろ。」
電話をかけてきたのは女のAだった。
Aは長いあいだ歌舞伎町で心理的に支配され、家族とも絶縁し、自分の金のかなりの部分をホストにつぎ込んできた女だった。
Sは挨拶すらしなかった。
「何だよ? おい、金返せって言ったよな。いつ返すんだ?」
「……違うの……Sくん……。」
Aが言葉を続けるより先に、Sの表情が変わった。
電話の向こうから奇妙な音が聞こえていた。
男の声。
だが会話ではない。
楽器の音もない。
誰かがAの家の中で、
伴奏なしでR&Bを歌っていた。
Sは身体を起こした。
「何だ?」
歌声は続いていた。
「お前……誰といる?」
Aは答えなかった。
Sの声が荒くなった。
「おい!! 誰といるんだって聞いてんだよ!」
そして怒鳴った。
「俺以外とは会うなって言っただろ!!」
しばらくして、Aの震える声が聞こえた。
「あの……来てくれる?」
「は?」
「怖いの……Sくん……。」
Aは泣きそうな声で言った。
「この人のほうが先に、うちに来たの……。」
Sは何も言わず、ソファへ投げたジャケットを再びつかんだ。
腕を通すと、そのまま玄関へ向かった。
バン!
マンションのドアが閉まった。
消えた男
Sは一人では行かなかった。
念のため、普段から付き合いのある、決して素行が良いとは言えない後輩を何人か呼び集めた。
バール。
野球のバット。
ナイフ。
それぞれが何かを手にした。
彼らは息巻きながらAのマンションへ向かった。
Sの頭にあったのはただ一つ。
Aの家に別の男がいる。
ついにAの部屋へ着いたSはドアの前に立った。
そしてためらうことなく、
ドン!!
ドアを蹴り開けた。
「おい!! どこだ!!」
後輩たちも一斉になだれ込んだ。
だが、
誰もいなかった。
部屋には怯えて泣いているAしかいなかった。
浴室も空だった。
玄関にも誰もいない。
彼らは緊張したままここまで駆けつけたのに、結局何も起きなかった。
少なくとも、目の前では。
ただし、一つだけ妙なものがあった。
開いた窓。
そこから冷たい雨風が吹き込んでいた。
そして窓枠には、誰かが残していったようなウェディングドレスと長いベールが引っかかっていた。
濡れたベールが風に合わせてゆっくり揺れていた。
Sは顔をしかめた。
「……ウェディングドレス?」
Aは確かに男だと言っていた。
Sが聞いた。
「おい。さっきの野郎、どんな奴だった?」
Aはしばらく答えられなかった。
「あ……。」
彼女の声がまた震えた。
「男……。」
「だから、どんな奴だよ。」
「ランジェリーみたいな……ウェディングドレスを着てた……。」
「は?」
「白いハイヒールも履いてて……。」
Sの後輩たちは互いの顔を見た。
Aの顔が歪んだ。
「背もすごく高くて……筋肉もすごくて……。」
そして最後の言葉を吐き出した。
「ヴィンテージのマイクまで持ってた……!」
Aはとうとう言葉を続けられず泣き出した。
「……。」
Sと後輩たちの顔つきが妙に深刻になった。
彼らはしばらく互いの様子をうかがい、小声で話した。
「……ヤバい変態でもいるんじゃねえか。」
「最近は変態でも筋トレしてる奴いるしな。」
「でもどんな奴なんだ? ちょっと会ってみたいけどな。ㅋㅋ」
「笑ってる場合かよ。」
結局彼らは、奇怪な侵入者が一人うろついているらしい、と結論づけた。
Aに怪我はなさそうだった。
侵入者はすでに消えていた。
Sと後輩たちはしばらくしてAの部屋を出た。
だがSには、妙に嫌な感覚が残った。
ウェディングドレスのせいではない。
ハイヒールのせいでもない。
巨大な筋肉男という説明のせいでもなかった。
声だった。
電話越しに聞こえた、あの男の声。
初めて聞く歌だった。
なのに一節だけが、異様なほど頭から離れなかった。
“I'm Not The Kind……”
甘かった。
あまりにも甘くて、
かえって不気味だった。
数日後
Sはいつも通り店へ出た。
自分の常連の女たちを相手にした。
彼はその店でも名の知れたエース級のマダムホストだった。
そして悪辣さも、それに負けてはいなかった。
その日も複数の女を巧みに天秤にかけた。
ある女には愛を約束し、
ある女には捨てられるかもしれないという不安を植えつけ、
互いに競わせながら酒を売った。
その過程で、背負いきれない借金を抱えた女もいた。
自分に逆らう者へのやり方はさらに荒かった。
荒っぽい裏社会の人間を後ろ盾に、相手を叩き潰すこともあった。
その界隈でSはすでに悪名高い男だった。
一種の伝説だった。
その日も特別なことはなかった。
地獄の鬼が、地獄で平凡な一日を過ごしただけだった。
明け方。
Sは全身に酒の匂いを染みつかせ、自分の高級マンションへ戻った。
ジャケットをソファへ放った。
深く身体を預け、携帯を取り出した。
TikTokのような短い動画を次々と流し、一人で笑っていた。
一つ。
次。
また次。
そのとき、ふと壁の時計が目に入った。
秒針が動いた。
チク。
タク。
……
Sの指が止まった。
突然、
妙な感じがした。
何かがおかしい。
彼はゆっくり携帯を下ろした。
顔を上げた。
そして、
ようやく気づいた。
すでに、いた
リビングの反対側。
暗い空間の中に、
誰かが立っていた。
Sは動けなかった。
男も動かなかった。
白いハイヒール。
長く伸びた脚。
レースとランジェリーを思わせる奇妙なウェディングドレス。
異常に発達した筋肉。
巨大な体格。
長く垂れた白いベール。
そして男は、
腕を組んだまま、じっとSを見ていた。

Sの顔から、ついさっきまで残っていた酔いが消えた。
「……。」
怯えていた。
その瞬間、Aが泣きながら言っていた言葉が一つずつ蘇った。
「ランジェリーみたいなウェディングドレスを着た男……。」
「白いハイヒールも履いてた……。」
「背もすごく高くて、筋肉も多くて……。」
「ヴィンテージのマイクを持ってた……。」
Sの視線がゆっくり下へ落ちた。
男の手。
そこには、
ヴィンテージのマイクが握られていた。
Sの表情が固まった。
男はゆっくりマイクを口元へ運んだ。
🎙️
そして何の伴奏もなく、
その声で歌い始めた。
“I'm Not The Kind……”
Sの瞳が揺れた。
「……。」
あの声だった。
数日前。
Aの電話越しに聞いた、
まさに、あの声だった。
電話
Sは夢中で携帯をつかんだ。
指がボタンを押した。
呼び出し音。
一回。
二回。
つながった。
「おう。」
受話器の向こうから、荒く低い男の声が聞こえた。
声だけでも、ある程度年季の入った男だと分かった。
Sは慌てて口を開いた。
「あ……。」
息を飲んだ。
「あ、兄貴!!」
「何だ。」
「助けてください!!!」
その瞬間も、リビングの男は動かなかった。
白い花嫁衣装。
巨大な身体。
ヴィンテージマイク。
そして、
また歌った。
伴奏はない。
なのに奇妙なほど甘かった。
🎙️
“Who says 'Yes'!~ 🎶”
サビがリビングに響いた。
そして終わった。
受話器の向こうの男が突然黙った。
「……。」
Sは荒く息をした。
「兄貴?」
返事がない。
「兄貴!!」
しばらくして、受話器の向こうの年季の入った男が低い声で言った。
「……お前、ハズレを引いたな。」
Sの顔が固まった。
「え???」
「そいつ……。」
少し沈黙。
「都市怪談だ。」
「……何ですって?」
「もう東京じゃ伝説で有名だ。」
Sは目の前の男を見た。
花嫁はまだそこにいた。
腕を組み。
Sだけを見ていた。
「俺の弟分も……。」
受話器の向こうの声が少し低くなった。
「そいつに会って、終わった。」
「どういう意味ですか!!」
Sの声が裏返った。
「兄貴、助けてください!! お願いします!!」
「落ち着け。」
「どうやって落ち着けってんですか?! 今、俺の家に……!」
「黙ってよく聞け。」
Sは口を閉じた。
受話器の向こうで短い息遣いが聞こえた。
そして男は言った。
「そいつはな……。」
「……。」
Sは唾を飲んだ。
巨大な花嫁はまだ自分を見ていた。
「食い物を欲しがってる。」
「……え?」
「食い物だ。」
Sは呆然と聞き返した。
「……食べ物ですか?」
「そうだ。」
「……。」
「だから今から俺の言うことをよく聞け。」
受話器の向こうの声が低くなった。
「その花嫁に、何か食わせろ。」
Sは何も言えなかった。
そしてリビングの向こう側。
巨大な男が、
ごくゆっくり、
組んでいた腕をほどいた。
ヤクザDの回想録

雨の東京。
黒い車を運転するDは左手でハンドルを握り、右手の煙草から長く煙を吐いた。
そして昔のことを思い出した。
「うちには、どうしようもない末っ子が一人いた。就職もしない、恋愛もしない、部屋に引きこもって何もしない。俺みたいに悪鬼にでもなって何かやろうって気すらなかった。家族もあいつを、いないものみたいに扱ってた。」
そんなある日、久しぶりに弟分から電話が来た。
妙なことにDは、その電話が最後になるような気がした。
「まあ……Wands King Bride。案外、立派な花嫁なのかもしれねえな。あいつは性別も年齢も職業も見た目も選ばない。恋愛も結婚も無理だと思われてた奴には……案外、いい縁だったのかもしれない。」
そして何の望みもなかった弟分は、部屋の外へ出た。
働いた。
人に会った。
事業を始めた。
いつの間にか、スタートアップ業界の新鋭になっていた。
「花嫁の特別な内助でも受けてるのかね……。」
もちろんDは、弟分がなぜあれほど必死に金を稼いでいるのか知らなかった。
なぜ冷蔵庫が空になることを、あれほど恐れているのかも知らなかった。
Dは煙草の煙を長く吐いた。
「だがな。うちの一家だけじゃない。○○組でも死んだ奴は山ほどいる。俺にかかってきた電話だけでも三本だ。目撃談なんて数え切れねえ。どんな大男が来ても、どんな悪鬼みたいな奴が来ても……あいつには勝てない。それだけは断言する。」
Sの人生相談
S: 「あ、あああ兄貴!!! じゃあ俺、どうすればいいんですか!!!!」
D: 「普通に生きろ。」
S: 「はい????」
D: 「一緒に暮らせ。食わせながら。」
S: 「いつまでですか?!」
D: 「知らん。」
S: 「あにいいいいき!!!!」
D: 「お前ホストなんだろ。この際、仕事も変えたらどうだ。花嫁が喜びそうなやつに。」
S: 「なんで俺の人生設計まで変わるんですか?! 花嫁は何が好きなんですか?!」
D: 「知らん。うちの弟分はスタートアップを始めたな。」
S: 「それ花嫁の好みなんですか?!」
D: 「俺も知らん。」
S: 「じゃあなんで勧めるんですか!!!!」
D: 「生きてるだろ。」
S: 「……もしかして、スタートアップ好きですか?」
D: 「聞いてるか、S?」
S: 「……兄貴。デリバリーアプリ開きました。」
D: 「そうか。」
S: 「何を頼めば……?」
D: 「高いやつにしろ。」
S: 「なんでですか?!」
D: 「新婚初夜だろ。」
S: 「あにいいいいいいき!!!!」
《Wands King Bride · 都市怪談 No.32》
이 이야기는 실제 인물의 성명 및 실제 상호와는 관계가 없으며, 재해석된 도시괴담일 뿐입니다. 등장인물의 이름은 모두 이니셜로 표기합니다.
어느 비 오는 새벽
도쿄의 어느 멘션.
시간은 새벽 4시 무렵이었다.
아이돌이나 영화배우처럼 번듯하게 차려입은 한 남자가 늦은 귀가를 마치고 집으로 돌아왔다.
그의 이름은 S.
느긋하게 재킷을 벗어 소파에 던지고 몸을 기대려던 순간, 휴대전화가 울렸다.
S는 화면에 뜬 이름을 확인하자마자 표정을 구겼다.
“A?”
그리고 짜증스럽게 전화를 받았다.
“아, 누구야? 이 시간에…… 응? A?”
혀를 찼다.
“뭐야, 이년아. 내가 이 시간에는 전화하지 말라고 했잖아.”
전화를 걸어온 사람은 여성 A였다.
A는 오랫동안 가부키초에서 심리적으로 지배당하며 가족들과 절연했고, 자신이 가진 돈의 상당 부분을 호스트에게 바쳐온 여자였다.
S는 인사조차 하지 않았다.
“무슨 일이야? 야, 너 내가 돈 갚으라고 했잖아. 언제 갚을래?”
“……아니…… S군…….”
A가 말을 잇기도 전이었다.
S의 표정이 변했다.
전화기 너머로 이상한 소리가 들리고 있었다.
남자의 목소리.
그런데 대화하는 소리가 아니었다.
악기 소리도 없었다.
누군가 A의 집 안에서,
무반주로 R&B를 부르고 있었다.
S가 몸을 일으켰다.
“뭐야?”
노랫소리는 계속됐다.
“너…… 누구랑 있어?”
A는 대답하지 않았다.
S의 목소리가 거칠어졌다.
“야!! 누구랑 있냐고!”
그리고 소리쳤다.
“나 말고는 만나지 말라고 했지!!”
잠시 후 A의 떨리는 목소리가 들렸다.
“아…… 와줄 수 있어?”
“뭐?”
“무서워…… S군…….”
A가 울먹였다.
“이 사람이 먼저 우리 집에 왔다고…….”
S는 아무 말 없이 소파에 던져놓았던 재킷을 다시 집어 들었다.
팔을 끼워 넣고 곧바로 현관으로 향했다.
쾅!
멘션의 문이 닫혔다.
사라진 남자
S는 혼자 가지 않았다.
혹시 모를 상황에 대비해 평소 알고 지내던, 행실이 썩 좋다고는 할 수 없는 후배 몇 명을 불러 모았다.
빠루.
야구방망이.
칼.
각자 손에 무언가를 챙겼다.
그들은 씩씩거리며 A의 멘션으로 향했다.
S의 머릿속에는 단 하나뿐이었다.
A의 집에 다른 남자가 있다.
마침내 A의 집에 도착한 S는 방문 앞에 섰다.
그리고 망설임 없이,
쾅!!
문을 걷어차고 들어갔다.
“야!! 어디 있어!!”
후배들도 우르르 뒤따라 들어왔다.
하지만,
아무도 없었다.
방 안에는 겁에 질린 채 울고 있는 A만 있었다.
욕실도 비어 있었다.
현관에도 아무도 없었다.
그들은 씩씩거리며 긴장한 채 이곳까지 달려왔지만, 정작 아무 일도 벌어지지 않았다.
적어도 눈앞에서는.
그런데 이상한 것이 하나 있었다.
열린 창문.
그곳으로 차가운 빗바람이 들어오고 있었다.
그리고 창틀에는 누군가 남겨놓은 듯한 웨딩드레스와 긴 베일이 걸려 있었다.
젖은 베일이 바람을 따라 천천히 흔들렸다.
S가 얼굴을 찌푸렸다.
“……웨딩드레스?”
분명 A는 남자라고 했다.
S가 물었다.
“야. 아까 그 새끼 어떻게 생겼는데?”
A는 한동안 대답하지 못했다.
“아…….”
그녀의 목소리가 다시 떨렸다.
“남자야…….”
“그러니까 어떻게 생겼냐고.”
“란제리 같은…… 웨딩드레스를 입고 있었어…….”
“뭐?”
“하얀색 하이힐도 신고…….”
S의 후배들이 서로를 바라봤다.
A의 얼굴이 일그러졌다.
“키도 너무 크고…… 근육도 엄청 많고…….”
그리고 마지막 말을 내뱉었다.
“빈티지 마이크까지 들고 있었어……!”
A는 결국 말을 잇지 못하고 울음을 터뜨렸다.
“…….”
S와 후배들의 얼굴빛이 묘하게 심각해졌다.
그들은 잠시 서로 눈치를 보더니 작은 목소리로 이야기를 나누었다.
“……위험한 변태가 있나 봐.”
“요즘 변태들도 운동광인 경우가 있어.”
“근데 대체 어떤 놈이냐? 만나보고 싶긴 하네. ㅋㅋ”
“야, 웃을 일이냐?”
결국 그들은 기괴한 침입자 하나가 돌아다니는 모양이라고 결론 내렸다.
A가 다친 곳도 없어 보였다.
침입자는 이미 사라졌다.
S와 후배들은 얼마 뒤 A의 거처를 떠났다.
하지만 S에게는 이상하게 불길한 기분이 남았다.
웨딩드레스 때문이 아니었다.
하이힐 때문도 아니었다.
거대한 근육질 남자라는 설명 때문도 아니었다.
목소리였다.
전화기 너머로 들려오던 그 남자의 목소리.
처음 듣는 노래였다.
그런데 한 소절이 이상할 정도로 머릿속에서 떠나지 않았다.
“I'm Not The Kind……”
감미로웠다.
너무 감미로워서,
오히려 오싹했다.
며칠 후
S는 여느 때와 다름없이 가게에 나왔다.
자신의 단골 아가씨들을 상대했다.
그는 그 가게에서도 알아주는 에이스급의 마담 호스트였다.
그리고 악랄함 역시 그에 못지않았다.
그날도 여러 여자들을 교묘하게 저울질했다.
누군가에게는 사랑을 약속하고,
누군가에게는 버림받을지 모른다는 불안감을 심고,
서로를 경쟁시키며 술을 팔았다.
그 과정에서 감당하기 어려운 빚을 지게 된 여자도 있었다.
자신의 뜻을 거스르는 이들을 상대하는 방식은 더욱 거칠었다.
험한 뒷세계와 연결된 사람들을 등에 업고 상대를 짓밟는 일도 있었다.
그 동네에서 S는 이미 악명 높은 인간이었다.
일종의 전설이었다.
그날 역시 다를 것은 없었다.
지옥귀가 지옥에서 평범한 하루를 보냈을 뿐이었다.
새벽.
S는 온몸에 절은 술 냄새를 풍기며 자신의 고급 멘션으로 돌아왔다.
재킷을 소파에 던졌다.
몸을 깊숙이 기대고 휴대전화를 꺼냈다.
틱톡 같은 짧은 영상을 넘겨보며 혼자 낄낄거렸다.
한 영상.
다음 영상.
또 다음 영상.
그러다 문득 벽에 걸린 시계가 눈에 들어왔다.
초침이 움직였다.
틱.
탁.
……
S의 손가락이 멈췄다.
순간,
이상한 기분이 들었다.
뭔가가 이상했다.
그는 천천히 휴대전화를 내렸다.
고개를 들었다.
그리고,
그제야 보았다.
이미 있었다
거실 반대편.
어두운 공간 속에,
누군가 서 있었다.
S는 움직이지 못했다.
그 남자 역시 움직이지 않았다.
하얀색 하이힐.
길게 뻗은 다리.
레이스와 란제리를 연상시키는 기묘한 웨딩드레스.
비정상적으로 발달한 근육.
거대한 체구.
길게 늘어진 하얀 베일.
그리고 그 남자는,
팔짱을 낀 채 가만히 S를 바라보고 있었다.

S의 얼굴에서 조금 전까지 남아 있던 술기운이 사라졌다.
“…….”
겁에 질렸다.
그 순간 머릿속에서 A가 울며 했던 말이 하나씩 되살아났다.
“란제리 같은 웨딩드레스를 걸친 남자야…….”
“하얀색 하이힐도 신었어…….”
“키도 너무 크고 근육도 많고…….”
“빈티지 마이크를 들고 있었어…….”
S의 시선이 천천히 아래로 내려갔다.
남자의 손.
그곳에는,
빈티지 마이크가 들려 있었다.
S의 표정이 굳었다.
남자가 천천히 마이크를 입가로 가져갔다.
🎙️
그리고 아무런 반주도 없이,
그 목소리로 노래하기 시작했다.
“I'm Not The Kind……”
S의 동공이 흔들렸다.
“…….”
그 목소리였다.
며칠 전.
A의 전화기 너머에서 들었던,
바로 그 목소리였다.
전화
S는 정신없이 전화기를 집어 들었다.
손가락이 버튼을 눌렀다.
신호가 갔다.
한 번.
두 번.
연결됐다.
“어이.”
수화기 너머에서 거칠고 낮은 남자의 목소리가 들려왔다.
목소리만 들어도 어느 정도 나이가 있는 사람처럼 느껴졌다.
S가 다급하게 입을 열었다.
“혀…….”
숨을 삼켰다.
“혀, 형님!!”
“뭐야.”
“도와주세요!!!”
그 순간에도 거실의 남자는 움직이지 않았다.
하얀 신부복.
거대한 몸.
빈티지 마이크.
그리고,
다시 노래했다.
무반주였다.
그런데 기묘할 정도로 감미로웠다.
🎙️
“Who says 'Yes'!~ 🎶”
후렴구가 거실을 울렸다.
그리고 끝났다.
수화기 너머의 남자가 갑자기 침묵했다.
“…….”
S가 숨을 몰아쉬었다.
“형님?”
아무 대답이 없었다.
“형님!!”
한참 뒤,
수화기 너머의 관록 있는 남자가 낮은 목소리로 입을 열었다.
“……너 잘못 걸렸군.”
S의 표정이 굳었다.
“네???”
“그놈…….”
잠시 침묵.
“도시괴담이야.”
“……뭐라고요?”
“이미 도쿄에서는 전설로 유명해.”
S는 눈앞의 남자를 바라보았다.
신부는 여전히 그 자리에 있었다.
팔짱을 끼고.
S만을 바라보며.
“내 아우도…….”
수화기 너머 남자의 목소리가 조금 낮아졌다.
“그놈을 만나고 끝났어.”
“무슨 소리예요?!!”
S의 목소리가 갈라졌다.
“형님, 도와주세요!! 제발!!”
“침착해.”
“어떻게 침착해요?! 지금 내 집에……!”
“닥치고 잘 들어.”
S가 입을 다물었다.
수화기 너머에서 짧은 숨소리가 들렸다.
그리고 남자가 말했다.
“그놈은 말이야…….”
“…….”
S는 침을 삼켰다.
거대한 신부가 여전히 자신을 바라보고 있었다.
“먹을 걸 원한다고.”
“……네?”
“먹을 거.”
S가 멍하니 되물었다.
“……먹을 거요?”
“그래.”
“…….”
“그러니까 지금부터 내가 하는 말 잘 들어.”
수화기 너머의 목소리가 낮아졌다.
“그 신부한테 뭘 좀 먹여.”
S는 아무 말도 하지 못했다.
그리고 거실 건너편.
거대한 남자가,
아주 천천히,
팔짱을 풀었다.
야쿠자 D의 회고록

비 내리는 도쿄.
검은 차를 운전하던 D는 왼손으로 운전대를 잡고, 오른손에 든 담배의 연기를 길게 내뿜었다.
그리고 오래전 일을 떠올렸다.
“우리 집에는 가망이 없던 막내가 하나 있었다. 취업도, 연애도 안 하고 방에 처박혀 아무것도 하지 않았지. 나처럼 악귀라도 돼서 뭐라도 하려는 것도 없었어. 가족들도 그 녀석을 없는 존재처럼 취급했다.”
그러던 어느 날, 오랜만에 아우에게 전화가 왔다.
이상하게도 D는 그 전화가 마지막 전화가 될 것 같은 기분이 들었다.
“하여튼…… Wands King Bride. 어쩌면 훌륭한 신부일지도 모르지. 그놈은 성별도 연령도 직업도 생김새도 가리지 않아. 연애도 결혼도 가망이 없다 생각했던 녀석에겐…… 어쩌면 잘된 결혼이었을지도 몰라.”
그리고 아무 가망도 없던 아우는 방 밖으로 나왔다.
일을 했다.
사람을 만났다.
사업을 시작했다.
어느 순간 그는 스타트업 업계의 신예가 되어 있었다.
“신부의 특별한 내조라도 받는 걸까…….”
물론 D는 아우가 왜 그렇게 필사적으로 돈을 벌고 있는지 몰랐다.
왜 냉장고가 비는 것을 그토록 두려워하는지도 몰랐다.
D는 담배 연기를 길게 내뿜었다.
“하지만 말야. 우리 일가뿐 아니라 ○○조직에서도 죽은 녀석들이 수두룩하지. 나에게 걸려온 전화만 해도 세 통이다. 목격담도 수두룩하고. 어떤 장정이 와도, 어떤 악귀 같은 놈이 와도…… 그놈을 이길 수 없다. 그건 장담하지.”
S의 인생상담
S: “혀 혀혀혀형님!!! 그럼 전 어떡하나요!!!!”
D: “그냥 살아.”
S: “네????”
D: “같이 살아. 먹이고.”
S: “언제까지요?!”
D: “몰라.”
S: “혀어어엉니이임!!!!”
D: “너 호스트라며. 이참에 직업도 바꾸든가. 신부가 좋아할 만한 걸로.”
S: “왜 제 인생계획까지 바뀌는데요?! 신부가 뭘 좋아하는데요?!”
D: “몰라. 우리 아우는 스타트업을 하더군.”
S: “그게 신부 취향이에요?!”
D: “나도 몰라.”
S: “그럼 왜 추천하시는 건데요!!!!”
D: “살아 있잖아.”
S: “……혹시 스타트업 좋아하세요?”
D: “듣고 있냐, S?”
S: “……형님. 배달앱 켰습니다.”
D: “그래.”
S: “뭐 시킬까요……?”
D: “비싼 걸로 시켜.”
S: “왜요?!”
D: “신혼 첫날이잖아.”
S: “혀어어어어엉니이임!!!!”
《Wands King Bride · 도시괴담 No.32》
This story is a reinterpreted urban legend and is unrelated to the names of real people or actual businesses. All characters are identified only by initials.
One Rainy Dawn
Somewhere in Tokyo, in an apartment building.
It was around four in the morning.
A sharply dressed man, polished enough to pass for an idol or film star, finally returned home after a late night.
His name was S.
He lazily slipped off his jacket, tossed it onto the sofa, and was about to sink back when his phone rang.
The moment S saw the name on the screen, his face twisted.
“A?”
He answered with open irritation.
“Who is it at this hour… huh? A?”
He clicked his tongue.
“What the hell? I told you not to call me at this hour.”
The caller was a woman named A.
For a long time in Kabukicho, A had been psychologically controlled, cut off from her family, and handed a large portion of her money over to a host.
S did not even bother to greet her.
“What is it? Hey, I told you to pay me back. When are you paying?”
“…No… S…”
Before A could continue, S's expression changed.
Something strange was coming through the phone.
A man's voice.
But he was not talking.
There were no instruments either.
Someone inside A's apartment was
singing R&B completely a cappella.
S sat upright.
“What?”
The singing continued.
“Who… are you with?”
A did not answer.
S's voice hardened.
“Hey!! I asked who you're with!”
Then he shouted.
“I told you not to see anyone but me!!”
A moment later, A's trembling voice came through.
“Could you… come here?”
“What?”
“I'm scared… S…”
A sounded close to tears.
“This person came to my house first…”
Without another word, S grabbed the jacket he had thrown onto the sofa.
He shoved his arms through it and headed straight for the door.
BANG!
The apartment door slammed shut.
The Vanished Man
S did not go alone.
Just in case, he called up several younger associates he knew, none of whom could exactly be called well-behaved.
A crowbar.
A baseball bat.
A knife.
Each of them carried something.
Fuming, they headed for A's apartment.
There was only one thought in S's head.
There is another man in A's apartment.
At last S reached A's door.
Without hesitation,
BOOM!!
he kicked it open.
“Hey!! Where are you?!”
The others rushed in behind him.
But
no one was there.
Only A remained in the room, terrified and crying.
The bathroom was empty.
No one was in the entryway.
They had raced all the way there, furious and tense, only for nothing to happen.
At least, nothing they could see.
There was, however, one strange thing.
An open window.
Cold rain-laden wind blew through it.
And caught on the window frame, as though someone had left them behind, were a wedding dress and a long veil.
The wet veil swayed slowly in the wind.
S frowned.
“…A wedding dress?”
A had definitely said it was a man.
S asked her,
“Hey. What did that bastard look like?”
A could not answer for a while.
“Ah…”
Her voice began trembling again.
“A man…”
“I asked what he looked like.”
“He was wearing… a wedding dress that looked like lingerie…”
“What?”
“And white high heels…”
S's juniors looked at one another.
A's face crumpled.
“He was so tall… and incredibly muscular…”
Then she forced out the final detail.
“He was even holding a vintage microphone…!”
A finally broke down crying.
“…”
S and the others suddenly looked oddly serious.
They exchanged glances, then muttered among themselves.
“…Maybe there's some dangerous pervert wandering around.”
“Perverts work out these days too.”
“What kind of guy is he, though? I kind of want to meet him. Haha.”
“This isn't funny.”
Eventually they decided that some bizarre intruder must be roaming the area.
A did not appear to be injured.
The intruder was already gone.
Not long afterward, S and the others left A's apartment.
But an inexplicable sense of dread stayed with S.
It was not the wedding dress.
Not the high heels.
Not even the description of a gigantic muscular man.
It was the voice.
The man's voice he had heard through the phone.
It was a song he had never heard before.
And yet one line refused to leave his mind.
“I'm Not The Kind……”
It was sweet.
So sweet that
it was unsettling.
A Few Days Later
S went to work as usual.
He entertained his regular women.
Even in that club, he was known as an ace-class madam host.
His cruelty was every bit as famous.
That day too, he carefully played several women against one another.
To one he promised love.
Into another he planted the fear of being abandoned.
Then he made them compete while selling them alcohol.
Some women ended up with debts they could barely carry.
His methods became even rougher with anyone who defied him.
At times he used connections to the violent underworld to crush people who stood against him.
In that neighborhood, S was already infamous.
A legend of sorts.
There was nothing unusual about that day.
A demon from hell had merely spent another ordinary day in hell.
Dawn.
S returned to his luxury apartment reeking of alcohol.
He tossed his jacket onto the sofa.
He sank back and pulled out his phone.
He flicked through short videos, TikTok-style, chuckling to himself.
One video.
Next.
Another.
Then his eyes happened to catch the clock on the wall.
The second hand moved.
Tick.
Tock.
……
S's finger stopped.
Suddenly,
something felt wrong.
Something was off.
He slowly lowered his phone.
He raised his head.
And then,
only then did he see it.
He Was Already There
Across the living room.
In the darkness,
someone was standing there.
S could not move.
Neither did the man.
White high heels.
Long legs.
A bizarre wedding dress reminiscent of lace and lingerie.
Abnormally developed muscles.
A gigantic frame.
A long white veil.
And the man
stood with his arms folded, silently staring at S.

The alcohol vanished from S's face.
“…”
He was terrified.
At that moment, A's tearful description returned to him piece by piece.
“A man in a lingerie-like wedding dress…”
“He was wearing white high heels…”
“He was incredibly tall and muscular…”
“He was holding a vintage microphone…”
S's gaze slowly dropped.
The man's hand.
There,
he was holding a vintage microphone.
S froze.
The man slowly raised the microphone to his lips.
🎙️
And without any accompaniment,
he began to sing in that voice.
“I'm Not The Kind……”
S's pupils trembled.
“…”
That was the voice.
From several days earlier.
The voice he had heard through A's phone.
That exact voice.
The Call
S snatched up his phone.
His finger hit the button.
It rang.
Once.
Twice.
The call connected.
“Yeah.”
A rough, low male voice came through.
From the voice alone, he sounded like a man with years behind him.
S blurted out,
“B…”
He swallowed.
“B-Boss!!”
“What?”
“HELP ME!!!”
The man in the living room still did not move.
White bridal clothes.
A gigantic body.
A vintage microphone.
And then
he sang again.
A cappella.
Yet impossibly sweet.
🎙️
“Who says 'Yes'!~ 🎶”
The chorus rang through the living room.
Then it ended.
The man on the other end suddenly fell silent.
“…”
S panted.
“Boss?”
No answer.
“Boss!!”
After a long moment, the seasoned man on the phone spoke in a low voice.
“…You drew the wrong card.”
S's face hardened.
“What???”
“That thing…”
A pause.
“It's an urban legend.”
“…What?”
“It's already famous all over Tokyo.”
S looked at the man before him.
The Bride was still there.
Arms folded.
Watching only S.
“One of my boys…”
The voice on the phone lowered.
“He met that thing too. That was the end of him.”
“What are you talking about?!”
S's voice cracked.
“Boss, help me!! Please!!”
“Calm down.”
“How am I supposed to calm down?! It's in my house right now…!”
“Shut up and listen carefully.”
S closed his mouth.
A short breath came through the phone.
Then the man said,
“That thing…”
“…”
S swallowed.
The gigantic Bride was still staring at him.
“It wants food.”
“…What?”
“Food.”
S stared blankly.
“…Food?”
“Yeah.”
“…”
“So listen carefully to what I'm about to tell you.”
The voice on the phone dropped lower.
“Feed that Bride something.”
S could not speak.
Across the living room,
the gigantic man
very slowly
unfolded his arms.
Yakuza D's Memoir

Rainy Tokyo.
Driving a black car, D held the steering wheel with his left hand and let out a long stream of cigarette smoke from his right.
Then he remembered the past.
“There was a hopeless youngest one in our family. No job. No romance. He stayed shut in his room and did nothing. He didn't even have it in him to become some demon like me and at least do something. The family treated him like he didn't exist.”
Then one day, after a long silence, his younger brother called.
For some reason, D felt as though it might be the last call he would ever receive from him.
“Anyway… Wands King Bride. Maybe it really is a fine Bride. That thing doesn't care about sex, age, occupation, or looks. For someone everyone thought had no hope of love or marriage… maybe it was a pretty good match.”
And the younger brother who had once seemed hopeless finally left his room.
He worked.
He met people.
He started a business.
Before long, he had become a rising name in the startup world.
“Maybe he's getting some special support from his Bride…”
Of course, D had no idea why his younger brother worked so desperately to make money.
Nor did he know why an empty refrigerator terrified him so much.
D exhaled another long stream of smoke.
“But listen. It isn't just our family. Plenty of men in the ○○ organization have died too. I've personally received three calls. There are more sightings than I can count. No matter how big the man, no matter what kind of demon he is… nobody beats that thing. I can promise you that.”
S's Life Counseling Session
S: “B-B-B-Boss!!! Then what am I supposed to do?!”
D: “Live.”
S: “WHAT????”
D: “Live with it. Feed it.”
S: “For how long?!”
D: “Don't know.”
S: “BOOOOOSS!!!!”
D: “You're a host, right? Maybe change careers while you're at it. Something the Bride might like.”
S: “Why is my entire life plan changing?! What does the Bride even like?!”
D: “Don't know. My boy started a startup.”
S: “Is that the Bride's type?!”
D: “I don't know either.”
S: “THEN WHY ARE YOU RECOMMENDING IT?!”
D: “He's alive, isn't he?”
S: “…Do you happen to like startups?”
D: “You listening, S?”
S: “…Boss. I opened the delivery app.”
D: “Good.”
S: “What should I order…?”
D: “Get something expensive.”
S: “Why?!”
D: “It's your first night as newlyweds.”
S: “BOOOOOOOOSS!!!!”
《Wands King Bride · Urban Legend No.32》
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